Rock Am Ring - Webcast Live Report

 5月23日、スペインを皮切りに「Give Me ED ... 'Til I'm Dead」Tour が始まった。ブルース・ディッキンソンの事前の「このツアーはネーミングのとおり純粋に楽しむためのものだ」とのアナウンスから、オープニング・ナンバーを'The Number Of The Beast'とするセットリストを予想してみたら、オープニングはビンゴ、そのほかも我ながらいい線ついていた。そして今度はこのインターネット中継で「メイデンがいかに楽しんでいるか」のパフォーマンスを確認することになる。

 日本時間2003年6月7日午前5時。もう空は明るくなってきている…。

 PC に張り付いていると、BGM がUFO の'Doctor Doctor' となる。直感的に「来るな」と思った。スティーヴ・ハリスの選曲だろうか。その'Doctor Doctor' が終わるとすかさずおなじみ黙示録13章18節が流れ始めた! ショウのスタートだ。
 オープニングを飾る'The Number Of The Beast' では、ステージ後方に「666」の文字が。電飾で作られたその文字は、KISS のコンサートを連想させる。さらに髪を短くしたブルースは若く感じられ、落ち着くことなくステージを走り回って見事な猿人ぶりを披露。一着しかない(?)ノースリーヴのGジャンをまだ着ている。お気に入りなのか。スティーヴ・ハリスは「666 664」と書かれた黒のTシャツを着用。666 はこのRock Am Ringとしても664 はなんだろう?? またスティーヴは久々にサッカーユニフォームをやめ、ロック然としたスタイルに戻った。うん、こちらの方がいいね。デイヴ・マーレイはさっそく新しいエディのTシャツを披露。
それにしても、幾分演奏がばらけて聴こえる。PAが悪いのか?? それともバンドははしゃぎすぎているのか!?

まるでKISS の電光板 モミアゲはブレイズ !? 666 のTシャツ

 'The Trooper' ではおなじみユニオンジャックを持った兵士エディのバックドロップ。ブルースもすかさずユニオンジャックを振り回す。そして、弦楽器の4人がステージ前方にそろって乗り出す姿は圧倒的なカッコよさ !! これぞメイデン、これぞヘヴィ・メタルだ。しかし、勢いがありすぎたのかギターが明らかにリズムより走っている。が、それだけテンションの高いライヴといえるんだろう。どちらかというと、いつもはリズム隊が走り気味だからね(笑)。やはり、バンドははしゃぎすぎているんだ!!
 なつかしの'Die With Your Boots On' に続いて演奏された'Revelations' はツイン・ギターが素晴らしい。これまでの80年代前半の楽曲群では、デイヴ・マーレイの甘く流れるようなストラトのトーンが素晴らしい。間違いなくデイヴが「メイデンらしさ」を作り出している証だろう。一方、ヤニック・ガーズは派手なパフォーマンスは素晴らしいが、とんがった感じのギターソロの音色はもうひとつ、か。
 そして最近ではハイライト的に演奏されることの多かった'Hallowed Be Thy Name' が早くも登場し、続く'22 Acacia Avenue' ではブルースはドラムのシンバルを叩いておおはしゃぎ。この曲も、うれしい。これらの久々に演奏された82年、83年の曲はトリプルギターによってより重厚なサウンドとなり甦っている。ニューアルバムリリース後となるであろう来日公演ではこれらの曲が演奏される可能性は少ないかもしれない。それでも、来日公演で演奏されることを期待せずにはいられない!!
 これまでのセットを見ていると、大作よりはストレートな楽曲で構成された「No Prayer On The Road」のツアーをふと思い出した。

THe 4 Trooers !! ソロならまかせなさい !! 「さすがだな、Davy」

 しばしのタイムトリップもこれで終わり、長めのMCのあといよいよ新曲'Wildest Dreams' を披露。この作風は、(Smith / Dickinson / Harris)かな。「♪I'm on my way, I'm on the road again 〜」と聞こえるサビを持つその曲は'The Wicker Man' や'Futureal' を連想させるスピーディな曲、いい曲なんだがメイデンの曲としてはやや平凡に聞こえる。その証拠に、続いて演奏された'The Wicker Man''Brave New World' の素晴らしいこと!! 劇的な復活劇とともに生まれたこれらの曲は、長くライヴのレパートリーとして残っていくことは間違いないだろう。
 唯一ブレイズ・ベイリー時代で演奏された'The Clansman' 、唸るベースからの'The Clairvoyant' では預言者エディのバックドロップ。ついに立体エディも登場!! エドワード大王として登場した彼は王冠をかぶり、のっしのっしとゆっくり歩く。そう、'Alexander The Great' をもじったであろうベストアルバム『Edward The Great 』ジャケットの彼だ。間髪いれずにライヴの定番となっていたのに最近ではプレイされなかった'Heaven Can Wait' が復活!! 一緒にステージでコーラスをとりたい衝動に駆られる。

パフォーマンスは任せなさい 大王様の御通り ♪オゥオ〜

 'Heaven 〜' で恒例の間奏での大合唱のあと、'Fear Of The dark' でさらに大合唱は続きそのまま'Iron Maiden' へ突入。インターネット回線の不調でここでのエディを見逃してしまった!! I Love Daveさんのレポートによれば「いきなり頭がパカンって割れた」らしい。後で確認したら、「Give Me Ed ... 'Till I'm Dead 」告知とDVD「Visions Of The Beast 」に使われた金属っぽいエディの頭部がまさに「パカン」と割れ、脳ミソがセットされるとエディが暴れだす、というもの。「Give Me ED」とはこういう意味か!? このエディはニューアルバムリリース後も使われるのだろうか??
マシンガン炸裂 脳ミソをくれ〜 客のノリの良さに御満悦

 アンコール1曲目は'Bring Your Daughter ... To The Slaughter' 。以前はイントロで掛け合いをやっていたが、今回はブルースが「一息で声を出し続ける」という芸(?)を披露。なんとそれは、30秒以上あったのではないか!!! 「声を出す」だけで最高のパフォーマンスを見せるブルース、彼のエンターテインメントはメイデンにいてこそ最高級のものになるのだと確信した瞬間だった。'2 Minutes To Midnight' がアンコールだったのはおそらく初めてのことではないだろうか。そういう意味でも新鮮だ。観客も最後の力を振り絞ってヘッドバンギング。そして、ラストはいまや「アンコールの定番」'Run To The Hills' 。最高潮のテンションでライヴは終了した。

2 Minutes のリフは俺のほうがうまい !! 似てますか? 小泉に

 あえて苦言を呈するとすれば'The Number Of The Beast' ではブルースのテンションがあがりすぎたのか唄い方が雑にも聞こえたし、ギタリストたちもテンションがあがりすぎたのか、あるいはモニタシステムが悪いのかギターのからみが走りっぱなしだった。ニコもフィルインが不安定で、全体にラフな演奏ではあった。だがそれは彼らのテンションが高いことの表れだろうし、'Die With Your Boots On' 'Revelations' '22 Acacia Avenue' といった驚きの選曲や、ライヴの楽しさを一気に高める'Heaven Can Wait' の復活など、「楽しめないファンがいるはずがない」ライヴだった。バンドもファン以上にプレイを楽しんでいたのではないだろうか。

 ツアー前に「このツアーはネーミングのとおり純粋に楽しむためのものだ」と語ったブルース・ディッキンソン。それがウソではないことを我々ファンは見せつけられた。インターネット回線を通じて、全世界のメイデン・ファンはこの瞬間ひとつになった。このツアーは「'Til I'm Dead」の名のとおり、「Dance Of Death」リリースまで続く。(wickerman)


 【Set List】 Rock Am Ring at Nurburgring , Germany , June 6, 2003

BGM〜Doctor Doctor

The Number Of The Beast
The Trooper
Die With Your Boots On
Revelations
Hallowed Be Thy Name
22 Acacia Avenue
Wildest Dreams (New Song)
The Wicker Man
Brave New World
The Clansman
The Clairvoyant
Heaven Can Wait
Fear Of The Dark
Iron Maiden

-encore-

Bring Your Daughter ... To The Slaughter
2 Minutes To Midnight
Run To The Hills